昨今、お墓は要らないと言う声を聞くようになりました。これは仏教を学ぶ者として思うに、まことに寂しい残念なことです。何故かというと仏教徒にとってお墓は、供養塔でもあるからです。
仏教には二大潮流があります。主に東南アジアに展開したのは、解脱強調の部派仏教でした。対してチベット、中国、朝鮮半島から日本に伝わったのが、救済強調の大乗仏教であります。
特に日本の仏教は、亡き方を出世間と成られたと捉え直し、仏戒を授けて佛弟子として入道せしめるという、普遍の救済を実現してまいりました。
お墓は亡骸を葬る場所のみならず、安心を形に顕わして、佛の教えを普く示す塔なのです。またお墓を目の当たりにすれば、何時でも誰にでも、敬虔さを感得せしめる聖所なのです。大小などに拘らず、また維持の難しさがあれども工夫をもって存続してゆくべき、大切さを具えているのです。 |