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御布施の向き
よくお檀中に尋ねられることがあります。 「お布施の向きはどちらですか」と。 「お布施」「御布施」「喜捨」「志」「恩金」etc、要するに供養の浄財であり、心をこめてお金などを包んだものです。名称の定義は省きますが、何れも施主の志しを表すものであり、またその行いは布施行となりますので、当地方ではほぼ「御布施」で通っております。 さて「向き」とは当仏の前に供えた場合です。法要後に包みを僧侶に渡す場合は、もちろん施主から見ては逆さまになるでしょう。それは「御祝儀」や「御見舞」などの包みと同じ、いわゆる常識です。もっともお坊さんのお経への「謝礼」などと考えるのであれば、疑問などあろう筈がありませんが。 迷うのは仏前への供え方のようです。 ここで学ぶべきこと、供養は当仏へ向けてであっても、当仏は一切衆生のための心があるということです。つまり「自分を通じて皆のため」です。一旦は預かれども、それを回らす心をお持ちなのです。これが「応供」の心。「応供」とは「供養を受けるに値する境涯」と説かれますが、要するに衆生済度の心があるが故に、供養に応じられるのです。もっとも曹洞宗では拝具授受作法として、直接の手渡しをせずに、仏前や床の間に供える作法がありますから、心得て学ぶべき事であります。 結論は「お布施は当仏に向ける」ということ。「貴方を通じて皆のため」です。そしてそれに当然、応じられる仏様なのです。僧侶はその皆のための心を承って預かり帰り、お寺の運営に役立てるのです。もちろんお寺も「寺を通じて皆(社会)のため」です。それを弁えぬと「坊主丸儲け」などと、陰口が聞こえてきます。
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2006/05/05 13:52
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